Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

     “春より甘甘?”
 


今年は格別、雪が多かったそれはそれは寒かった冬も、
さすがにそろそろ腰を上げようとしているものか。
天から降っての雲間から射す陽差しが、日に日に力強さを増して来たし。

 「雪が沢山降り積もっている場所も、
  今まではきんきんに凍っていたものが、
  暖かさに緩んで来たか、
  お水びしゃびしゃなトコが増えて来たんですよね。」

米粉のお団子に糖蜜を垂らしたの、
嬉しそうにいただきながら。
この何日かの暖かさ、
あちこちでも感じるとの報告をする書生くんなのへおぶさって、

 「そなの、びちゃびちゃなの。」

見た目は五歳児くらいだが、その実、仔ギツネな坊やだから、
総身の重さもさほどはなくてのこと。
両手両足まとめて、仲良しの書生くんの肩やら背中へ乗っけるという、
結構無体な乗っかり方をするのが常のくうちゃんが。
こちらさんもお団子うまうまと 小さなお口でぱくつきながら、
瀬那くんのお言いようを繰り返すのが、何ともおしゃまで可愛らしくって。

 もうもうこいつらはよ、と

可愛くて可愛くてしょうがねぇな、こらと。
言葉にはせずとも、

 “しっかり態度で言ってるぞ、おい。”

権門の古ダヌキどもから、クセの強い大妖たちまで、
誰もが恐れ入る存在を、逆に震え上がらせているほどの術師殿だというに、
同居しているおチビさんたちに骨抜きだとは、と。
自分だって、恐持てで負けず嫌いな邪妖の惣領殿だってのに、
こちらの術師様へは骨抜きな黒の侍従殿が、
何だかなぁと、こそり苦笑していらしたりして。(笑)

 「ああ、ほれ。蜜が垂れておるぞ。」
 「あれれ?」
 「あやや?」

もちもちした団子やとろとろの糖蜜で手が汚れないようにと、
ツタさんが竹の串で刺してくれたというのにね。
愛らしい口許、つやつやに光らせてたり、
そちらもしんこ細工みたいな やわやわで小さなお手々を、
ちょみっとぺたぺたさせちゃったりするのへと。
困った奴らだなぁとの苦笑交じり、
絞った手ぬぐいで“ほれ見せな”と拭って差し上げる、
案外とまめまめしいお師匠様でもあったりし。

 「だから。
  お前らにやらせると
  なかなか上手いこと拭き切れんだろうが。」

ちょっぴり照れてか、ぐいいと口許拭う手に力が入ったものの。

 「おやかま様、痛たたなのぉ。」

小さな仔ギツネさんが、ふややんと泣き声を上げ、
甘い色合いの髪の間に立ったお耳ごと、
かぶりを振るよに“いやいや”をした途端、

 「ああ、すまんな すまん。」

どこが痛かった、此処か?なんて。
お顔を寄せて、のぞき込んでの案じたりするもんだから。

 「どっかの誰かさんを笑えんよな。」
 「うっせぇなっ。お前こそだろがよっ

セナ坊が難儀していた魚の小骨、
器用にむしってやったのは何処の誰だったやら、と。
いい大人二人が、
小さな坊やたちへの構いつけで
どっちもどっちの揉め方をしておいでで。

 『…っ、ぶぇっくしょいっ。』

 春も間近いというのにね。
 お山のどこかで 今年も冬眠しないでおいでの、
 縄みたいな髪をした蛇の邪妖様が、
 風邪でもないのに くさめを放っておいでかも知れません。(笑)





   〜Fine〜  13.02.28.


  *昨日、今日、明日と、花見時分の気温になるそうで、
   しかも明日は“春一番”が吹くかも知れぬとのこと。
   暖かくなるというよりも
   突風が吹いて大荒れになるでしょうとの天気予報に、
   ああそうだった、暴れん坊なんだったねと、
   あまりに遠い春の記憶なんだなという、
   別な感慨も沸いたものです。


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